千切ったものと契られたもの
□秘書の運命
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「良かった?」
晴希さんはぐいっと私に近付き、少し疑心的な眼で私を見た。
「あなたは、妹の為にあの鬼畜な男の奴隷となったのに、妹はあなたの事など顧みずに幸せになっているのですよ」
晴希さんは全く分からないといったような顔をしていた。
「妹の為に、あなたは一生奴隷になるおつもりですか?」
「?」
私はさっきから晴希さんの言っている事がさっぱり分からなかった。
「……あなたは妹が幸せになる為に生れてきた存在のようだ………」
「っ……」
私は晴希さんの言葉に目をむいた。
「何が言いたいのですかっ……そんなっ…」
「違いますか?」
晴希さんは私の顎を掴んで、顔を上げさせる。
「可哀相な人だ。後から生まれてきた人の幸福の為の犠牲となるなんて…」
クスッ。
晴希さんの小さな笑いが、私の耳にしがみ付いて離れない。
すると同時に、私の中で昔の記憶がよみがえってきた。
忘れてきたと思っていた記憶。
それは―
親や親戚がいつも可愛がるのは―妹の方だった。