千切ったものと契られたもの
□社長の目的
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社長は再び目を閉じ、すまし顔で頷いた。
「分かった。解雇する。ただしお前もこの会社を辞めてもらおう」
「…え」
私は急展開に頭がついていけず、拍子抜けした。
「妹を返す代わりに会社を辞めろ」
どうする?と言って来た社長の目にはもはや私に選択権など与えてはいない。
強制的だ。
しかし毎晩泣いているという妹を返してもらいたい。
「分かりました。明日でも辞表を出します…」
「必要ない」
社長は私をまっすぐ見た。
「その代わり今日俺の家に来い。次の仕事を紹介してやる」
ニヤリと笑う社長の顔。
「次の仕事…?」
「そう」
社長は電話をかけ始めた。そして話し終わり、私に指示した。
「駐車場に行け。俺の専属ドライバーがいる。すぐに俺の家に行け」
「そんなっ…」
「妹は解放してやる」
有無を言わさない目に、私は何も言いようがなかった。