長編

□続、幼馴染がアレな件について
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0.5.幼馴染が幼馴染である件について



名前が俺から離れた10年以上前の話だ。




小さな頃からずっと一緒にいたやつを幼馴染と呼ぶのなら、名前は間違えなく幼馴染である。
けど、だからといって面倒をみてやる義理はない。


まだ、小学校低学年だった俺にはいつも後ろをついてくるワガママな名前はお荷物でしかなく、はっきりいって迷惑だった。


「ついてくんなよ!」
「でも、お母さんは幸男に着いてけっていったもん!」
「じゃあ、俺がくるまでここにいろ!
いいな!」


周りの友達と遊ぶ時、小さな名前の存在が邪魔になった。
いつもなら仕方なく名前も連れて行くのだが、友達が言った言葉に俺はヤケになった。


「幸男っていつもチビつれてるよな〜
たまには置いて来いよ〜」


たまには置いて来いよ
そうだ。毎日、妹でもないやつの面倒なんか見る必要はない。

だから、俺は公園の砂場で名前に待っているように言って友達と遊びに出かけたのだ。





遊びが終わった頃、俺はすっかり
名前のことを忘れていた。

家に帰ると、名前のお母さんつまりおばさんとうちの母さんがお茶をしていた。


「幸男、おかえり〜
あれ?名前ちゃんは?」


その時青くなったのを今も覚えている。
何しろ、名前はまだ小さくて、俺のあとをしつこく着いてくる名前が家までの道のりなんか知るはずもない。
しかし、名前を待たせたのは朝の9時からだ。
おばさんから預かった名前の弁当も俺のリュックの中だった。

あのワガママ名前がちゃんと待っているとも思えない。


学校で習った時計の見方が、どれだけ名前を忘れていたかを物語っていた。


夕焼けのかかった空に焦りを感じ急いで公園へ向かった。

「名前ッ!」


砂場には、予想外にも名前の姿がちゃんとあった。


「ん……ゆきお?」

どうやら俺を待っている途中で寝てしまったようで、土だらけの手で顔を擦っていた。


「どうしたの?もう帰ろうよ〜」
「ゴメンッ」
「なに!?どうして泣いてるの?」


小さいからって思ってたけど、名前は俺が邪魔に思ってることに気がついてたんだってわかると、自分の身勝手さに涙が出てきた。

「ほら、帰ろ」
「ゴメンな」

差し出された手を握った時、もうこいつを泣かせてはいけないと思った。



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