長編

□態度で示せ!
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1988年にメディア良化委員会による検閲に対抗する形で、図書館法が制定された。
また、その法を根拠とし、独自にある防衛組織が設立された。
それが、図書隊である。



正化31年現在、
図書隊は、業務部、防衛部、総務部など
いくつかの部署に仕事を分割し、良化委員会からの検閲に抵抗していた。


中でも、防衛部はその名の通り防衛員が所属する防衛業務担当の部署である。
ある時には、武装し良化委員会に立ち向かう形で戦闘をする。
命が保証されないときも少なくない。
そんな防衛部は、訓練から厳しい。


関東図書基地では、防衛部によるハイポートが行われていた。


「腕下げんな笠原!」
「は、い」


指導者である堂上が声を荒げた先にいるのは、今年入隊した笠原郁である。
男であろうとキツイこのハイポートをこなしいる彼女であるが、
疲労で腕が下がってきていた。


「苗字!お前もだ!」


笠原に数歩遅れる形で走っているのは、彼女と同じく今年入隊した苗字名前であった。

本人は笠原への注意で、腕を上げることを意識していたはすなのだが、
知らずのうちに下がっていたらしい。
もう一度腕を上げて前を向いた。


すると数歩先にいたはずの笠原が、根性でラストスパートをきっていた。


遅れをとりたくない。


その一心で、名前もまた、スパートをきった。



ところが、ゴールした先で安心しきってしまった。
膝が笑っていたこともあるが、倒れこんでいた笠原につまづいて名前も倒れこんでしまった。


「あ、ゴメ、」
「誰が倒れていいっつった!?
罰として腕立て!」


わざとではなかったが、
笠原を踏みつけてしまい、(実際笠原はカエルのような声をあげていた)
謝ろうとした瞬間に、また堂上からの怒号。
これには、笠原も名前も眉を顰めたが、
ここで文句を言えばどうなるのかは二人とも学習済みである。


ハイポートの後のキツイ腕立てをしながら、
次々とゴールしてくる同僚を見ていた。



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