長編

□積み木
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夏は、暑い。

なんて、誰もが知っているコトだが、その日は、特に暑く感じた。
屋内である体育館は、練習による汗やらで蒸し風呂状態になっていた。


そんな中での地獄のような練習を終えて、部室の中で着替えていた。


朝、なんとなく持ってきたジャージの上着は、全くの不必要でむしろただの荷物になった。


練習着やタオルを入れたカバンを肩に掛けて、上着は片手に持った。

あ゛〜、本当に暑い。


「お疲れっしたー」
「ちょい待ち若松、一つだけ頼まれてくれや」


早く家に帰りたい。
というか、エアコンのある涼しい場所に行きたいと思っていたのに。
早いとこ汗と熱で蒸している部室を出ようとしたのに、主将に呼ばれた。
こういうのはワザとではないかと思ってしまうのは主将の人柄がいけない。


「なんッスか?」
「本、返却してくれんか?」

主将の手には、分厚くて難しそうな参考書が一つあった。

あぁ、そういえばこの人もう受験なんだっけなんて、
来年は、俺の番なのに他人事に思えた。


「てか何で俺なんッスか!?
青峰とか、いるじゃないッスか!」


青峰の方を見て、オイ、と言ったが知らん顔をされ最高にムカついた。


「若松が図書館から、一番家が近いからのぅ」


その参考書をよく見てみれば、うちの高校の図書館のものではなくて、俺の通学途中にある図書館のものだった。
どうしてあそこの参考書を主将がもってるのかは考えないでおく。


「そんな嫌な顔するなや。
誰もタダでなんて、言ってないやろ」
「え?」

参考書と一緒に渡されたのは、マジバのセット無料券だった。


「え、マジッスか!?」
「この間、コンビニのクジで当てたんやけどな。ワシ、マジバ行かへんし」


今日は、なかなか運がいい。
本と無料券を持って、図書館へ向った。




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