長編

□氷編
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「まずいわ……」
数枚の紙切れを目の当たりにした監督の声に、全員が息を呑んだのがわかった。



私立誠凛高校は、去年創立したばかりの新設校である。

人学年約300人と人数は多く、さらにその学力の差は校内でも激しい。
そのため、成績には直接的に関係のない実力テストも、
下位100名は、補習となる。


「このバカガミがッ!!」
「イタッ!」
「どうしてあんたは反省しないの!?」

そして、いま怒鳴られているのは
前回は奇跡的に補習を逃れた彼
火神大我だ。


「今回は、決勝リーグが重なってるわけじゃない、イタッ!」
「今回は、合宿でしょうが!」

監督にしばかれている彼を、
クラスメイトである黒子を含むバスケ部のレギュラーは見守っていた。
というのも、本当に彼を見守っているのは極わずかであり、
実際は自分へのとばっちりを気にしていたりする。


「前回のテストは幸運にも幸運が重なった偶然の結果なのよ!」

前回のテストは、前日から2年生と黒子が教え込み
8割方緑間のコロコロ鉛筆のお陰だったりする。

「お、オイ黒子、あのコロコロ鉛筆は?」
「すみません、あれは今黄瀬君のところに…」
「鉛筆に頼るなぁぁああ!」

監督、相田リコが焦るのも無理はなかった。
今回、彼女2年生は火神に教え込むことができないのだ。

「な、何でだよ……ですか?」
「今回、生徒会の活動で合宿の前日まで時間はほとんど割けないわ」

相田は学年2位の学力を持つ。
前回の教え込みは、彼女がいてこそ、である。
彼女を抜けば、レギュラーの順位は50位を下回る。
個人の順位は良いが、相田が欠けた分火神に教えるほど、
彼らに余裕は無い。

「このままだと…」

誠凛不可欠のエース
火神大我は、合宿不参加。


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