長編

□少女編
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マジバにつくと、
森山センパイも笠松センパイも
ポテトLサイズや飲み物は単品で頼まずに
堂々とセットメニューを頼んだ。


もちろん、俺の奢りだ。

「センパイたち、よく食べるッスよね〜」
「…森山、ナゲット食べるか。」
「いいな、それ。シェイクも頼んだ。」
「勘弁してくださいッスよ〜」

冗談だ、という笠松センパイの言葉とともに俺らは席についた。



その時のことだった。


俺たちが座っていた席の横を通った女の子が、
財布を落としたのだ。


「あ、ちょっと!」
「な、何ですか?」


女の子は、有名スポーツメーカーのジャージに、
長い明るい色のふわふわした髪の毛で
メガネをかけていた。


「財布、落としたッスよ」
「あ、ありがとう」


ただこれだけのこと。
あり得ないシチュエーションではない。

が、このあとの展開があり得なかったのだ。


「待ってくれ!」
「はい?」
「え?」
「何いってんだ?」


声をあげたのは、
森山センパイだった。


「君が、財布を落としたのも、俺が拾ったのも、
全て運命だったんだ!」

「あ、いや、えっと」

女の子は、明らかに困惑していた。
まぁ、こんなこと急に言われれば誰だってそうだ。

というか、森山センパイ!
財布拾ったの俺なんですけど。

というか、あれ?
よく見たらこの人……


「女バスのマネージャーさんッスか?」
「え?」
「いや、髪の毛下ろして、メガネかけてるッスけど、
そうッスよね。」
「覚えていてくれたんですか!」

彼女は、俺のほうを輝いた瞳で見つめた。

俗に言う、可愛らしい子って感じだ。


「あの、アドレス教えてくれませんか、お嬢さん。」
「おい、森山、やめろって。」


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