長編

□少女編
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ボールは、軽快な音をたてて跳ねる。
自分の意のままに動くコレ。
高く跳んで、手からそっと離すと
吸い込まれるようにゴールをくぐった。


やっぱ、バスケは楽しい。

純粋に
そう感じられるようになったのは
つい最近のことなんだけど。

このチームでやってくのが楽しい。
このチームで、もっと勝ちたい。
けど、もっとチカラが必要だ。もっと強いチカラが。



コート上に散ったボールを拾うために一度練習をやめると、後ろから声をかけられた。

「おい、黄瀬!もう皆帰ってるぞ」
「へっ!?」


無我夢中になってやった練習。
気がついてみれば、目の前には、
制服姿の森山センパイがあった。

視線をずらすと体育館の入り口には、鍵を持った笠松センパイがいた。


いつから、二人しかいなくなったのか。全く気づかなかった。
それほどに集中していたらしい。


「すいません!いま片付けるッス!」


ヤバイ、俺なんの準備もしてねぇし、急がなくちゃ、センパイに…


急いで体育館を出て、着替えて準備をした。
練習後の秋風は、火照った身体には丁度いい。
そうか、もう秋なんだ。


ネクタイを締めると、部室に笠松先輩が現れた。


「部室閉めんぞ」
「他の人たちは?」
「お前が時間を気にせずやるから、もうとっくに帰ったんだよ!」

「す、すみませんッス…」


それほど、このスポーツは楽しいし、
もっと上手くなりたい。

こうして、練習終了まで待っていてくれることからも分かるとおり先輩たちも、そのことをわかってくれているようだった。


わかっていてくれている。

「俺、ポテトLサイズでいいぞ。」
「へ?」
「俺は、飲み物込で。」
「そんなぁ、あんまりッスよ!」
「お前が遅いから、帰んの遅くなったんだぞ」


そう、笠松センパイに睨まれて
俺は首を縦に振った。


わかってくれているのだろうか。


まぁ、このような過程を経て俺たちは、マジバに行くことになったのだった。



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