シリーズ krk
□Grün
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今現在、緑間は黄瀬のクラスにて一週間後に控えたテストのための対策を施していた。
説明してもぼーっと参考書を眺める黄瀬に呆れる彼、緑間は、改めて正面にいる黄瀬を眺める。ここ最近、黄瀬が体調不良だったことに彼は気づいていた。
その点は、部長である赤司やマネージャーである桃井も気づいていただろう。
ギャーギャーと騒がしくなったのは頂けないし、体調不良は自己管理の怠慢が現れたとしか思えない彼もまた、黄瀬がただの体調不良でないのかと疑っていた。
しかし、しばらくたつとケロリとしているのでその心配も杞憂だったのだが。
「つーか、全然わかんないッス!」
「お前は俺の何を聞いていたのだよ」
「話ッス!」
「そんなことを聞いているのではない!」
緑間は、教えているというのに聞いていない黄瀬に苛立ちつつも、黄瀬が赤点だったときの自分の責任も考え、一からもう一度教えようとした。
しかし、それも別の声に止められた。
「少しいいかい、黄瀬くん」
「苗字っち!」
緑間が顔を上げると、髪の毛が真っ白な女がいた。その髪の毛を括る真っ黒なリボンは、自然に彼の視線を引きつけた。
やって来たのは女だというのに、黄瀬は嫌な顔一つせず、いやむしろ喜ぶかのように対応していた。
「苗字っちって、まさかの一つ年下だったんスね!
いや〜学年にいないからお化けかと思っちゃったッスよ」
「ひどいな、恩人をお化けとは。
あぁ、話を戻すけど少し聞きたいことがあるんだ。」
黄瀬を借りても?
疑問形で、緑間の方を向く彼女自然と緑間は眉間にシワを寄せた。
黄瀬にこう言うことをいうのは大体告白だとわかっているからだ。
しかし、そういうのは当人たちの問題なので緑間はそのまま肯定した。
「では……いや、黄瀬くん、少し先に行っていてくれないかな」
「へ?分かったッス」
突然、黄瀬に先に行くよう促した彼女に何の意図があるのか彼女を見つめる緑間。
「何のようだ」
「私は、苗字名前だ。」
どうやら、日本語が通じない独特な人間と捉えた緑間は、苗字の相手をするのが億劫になる。
しかし、次の言葉で前言は撤回された。
「最近、困っていることがあるのではないのかな?
例えるなら、そう、そのラッキーアイテムとか、ねぇ…」
「何か、知っているのか…」
「知らないから聞いているの。まぁ、何かあれば私は文芸部の部室にいるさ。相談があるなら、私か黄瀬くんにするといいよ」
今度こそじゃあね、
そうつぶやいた苗字を緑間は自分でも気づかぬうちに凝視していた。
なぜなら、彼女が言っていたことに思い当たる節があったからだ。
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