シリーズ krk

□Purpurrot
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紫原にまたがったまま、苗字はまたクスクスと笑った。

「殺されると思っただろう?」
「ハァッ……ハァ」
「怖かった?」


あんだけやられれば、普通は怖いと紫原は思ったが、まだ彼の心臓は大きく早い脈をうねっていて、上手く言葉にならなかった。

しばらく深い呼吸を繰り返して紫原は上に乗っかる苗字を睨んだ。


「死ぬかと思った」
「それは悪いことをしたな…でも、これで君は呪いを見られる」
「は?」


見て、と苗字が指を指す先にあったのは大きな鏡であった。
紫原が、初めてこの部屋にやって来た時から目についていた鏡であり、文芸部の部室にあるのは不自然でもある。


紫原は、我が目を疑った。
その鏡に映るのは、自分と、自分の首に巻きつく黒いモヤ。
モヤは、首にから肩の方へと広がっていて、まるで息衝いているかのように蠢いていた。


「まさか、これ」
「話を信じなくても、これなら信じるだろう?」


得意気に話す苗字を他所に紫原は鏡から目を離して自分の首を見る。やはり、モヤがある。
手で離そうとするもモヤは霧のように手をすり抜ける。


「呪いはさ、普段は見えないのさ。それはね、人が普段は死の淵にいないからだよ。けど、私に殺され掛けたことで君は死を意識した。」


漸く我に帰り、苗字の話を意識し始めた紫原は、実態の掴めない呪いに恐怖心を抱いた。

「そのモヤは、段々と君の首を締めていくというわけだよ。」
「どうやって、こんなの取んだよ…」

紫原は、何度も何度も首の触れないモヤを撫でた。

「助けてほしいの?」


その言葉に紫原は、ゆっくり頷いた。




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