krk短編
□repeat
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我慢しきれず上がる口角を隠すように、顔を手で覆った。
全員で日本一を目指す、そう決めた矢先のことだった。
「っぐっ……ッ!」
目の前で木吉が膝を抱えて倒れた。
「木吉!」
明らかに、ラフプレーだった。
審判の死角であるために、うやむやにされたが、俺は見ていた。
花宮がラフプレーを指示するところを。
「お兄ちゃんッ!」
あの木吉が声を上げて倒れたために、みんなが木吉を呼んだ。
その中には、アイツの双子の妹である木吉名前の声があった。
彼女は中学から木吉のプレーを支えてきたらしい。
今は、木吉も誠凛もお世話になっているマネージャーだ。
「たいしたことない…大丈夫だ、すぐ戻る」
木吉がこうまで言い切るのだから、俺たちは負けるわけにはいけない。
誠凛は試合を続行し勝利して、決勝リーグへと駒を進めた。
早く木吉の元へ行こう。
伊月のその言葉で、握りしめた拳を抑え込み急いで病院へ向かおうとした。
「主将、先に行ってください。すぐに追いかけますから。」
全員が一刻も早く木吉の容態を知りたいときに、名前は呟くように小さな声で言った。
「お前、まさかアイツのところに…」
「お兄ちゃんが……あんなに苦しんでたの初めて見た……」
そう俯きながら話す彼女は、手で顔を覆っていた。
小さく震える背中に、反対なんてできなかった。
「わかった、俺も行く。」
「一人で行かせて……」
「気持ちはわかるが、お前一人だと危険だってわかんだろ」
「会場の中なら人も多いから大丈夫。」
心配しないで、そういいながら控え室を出て行く名前を全員が心配そうに見送った。
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