お花売りの少年
□騙すのは得意です
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いつの間にかその子は屋根の上へと着地していた。
『高そうなもん持ってんなぁ、あんた』
風に揺れたフードが脱げて、子供の顔が明らかになった。
マスルールと同じ赤い髪に、似ている目元。
そしてその顔はとても可愛らしい容姿をしていた。
「あの子…!」
思わずシンドバッドも声を上げるが、何食わぬ顔をして子供は立ち上がる。
『まったなぁ』
そう言うと、すぐにどこかへと消えていった。
困惑している3人に、町の人たちが声をかける。
「国王様、あなたもやられたんですね」
「は…?」
「あの子はああいって人の困ることをするのが大好きなんですよ」
「私たちも何度か取られていますわ」
次々に俺も、私も、と声が上がる中、不思議に思う。
何人も被害に遭っているというのに、誰も怒りに満ちた顔をしているものがいないからだ。
「あの…皆さんは怒っていないのですか?」
恐る恐るジャーファルが問いかける。
「怒るなんてそんな…」
「そうですよ、あの子は構って欲しくてやっているので」
「ちゃんと返してくれますし」
「「「可愛い子ですよ」」」
声をそろえて言う自分の国民に、シンドバッドはため息をついた。
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