□これくらいが丁度いい
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「ん…」



まぶしい。急な眩しさと共に、今まで休んでいた脳を叩き起こす。



目の前には白い壁。俺の部屋と同じくシンプルに纏めてある部屋だが、白を基準とし、全体的に明るく大人っぽい。そう。大人っぽいのだ。




「あら、起きちゃった?」

「名前さん…」




目の前にはこの部屋の主、名前さん。手には買い物袋で、今帰宅と言うところだ。




「猿比古君、余りにも気持ち良さそうな顔して寝るから、1人で買い物済ませちゃった。きっと気疲れしてたのね。」

「すみません、約束してたのに…」

「良いのよ。帰ってきたら猿比古君が居るってのもなかなか嬉しいものだしね。」




ボサボサになった俺の髪を手櫛で整え、にっこり微笑む彼女。でも…




「あら、猿比古君唇ガッサガサじゃない。」



キスし過ぎたからかしら?なんて。

化粧台を漁って俺に近づいてきたと思えば…



「なっ!?名前さんっっ!」

「動かないで口閉じてじっとして…?」




手にはリップクリームと呼ばれるスティック状の薬品。

くっ、と顎を持ち上げられ彼女の端正なカオが伏せ目がちに近づく。




「はい、終わり。猿比古君唇噛む癖、辞めなさいよ?…今も。」

「…。」




悔しい。自分が優位にたて無いのが。彼女のされるがままでいる自分が情けない。


普通は顎持ち上げるなんて俺がする事の筈なのに。だから悔しさからか無意識に、頻繁に唇を噛んでしまう。




「どうしたの?何処か痛い?」

「大丈夫…なんでも無いよ。」




少しばかり眉を垂らして心配そうに覗き込む。あぁ、なんて可愛らしいんだろう。

この瞬間、ふとした時に見せる幼さが思いのほかツボで、いつものされるがままなのが嘘に見えてくる。


…ほんと一瞬だけど。


「さ…るひこ君?」




気がついたら俺は彼女の頬に手を添えて、キスをしようとしていた。無論いつもなら到底出来ない。


いつもは彼女に言われて、自分でももどかしい位に緊張しながらするか、彼女からなのに。




案の定、彼女はぽかんとしたままで。



俺の目を見て少し落ち着いた声で名前さんが言った。





「猿比古君はさ、いつも見たいに私にせがまれるの…嫌い?」

「え…?」



意外だった。彼女の口からそんな事が発せられるなんて。

俺が戸惑ったりすぐ赤くなるのを見て綺麗に…満足そうに微笑むのに。



今日の名前さんはなんか変だ。いつものように俺をからかうより、不安気なそぶりが極端に多い。


返事のを返せずにいる時間が伸びるのに比例して、不安気に上目遣いで見つめてくる彼女。




可愛い。

…でも、俺が見たいのはそんなんじゃ無いのかもしれない。




「嫌い…じゃないです。寧ろ、今まで通りじゃない…悩んでるような元気の無い名前さん、調子狂います。」

「ほんとに…?ほんとにヤじゃ無い?」

「えぇ。」




やっぱり…やっぱり、俺のちっぽけなプライドなんかより、彼女が笑っている方がずっといい。



俺の事をそんな風に気にかけず、
満足そうに微笑む彼女が。




「ふふ。そっか…じゃあキスして?猿比古君ー…」

「はい。」




まだ少し震える手で頬を挟み、そっと触れる程度に口付ける。




やられっぱなしだとか、情けないとか、もうどうでもいい。


これが俺たちのベストだからー…


彼女が笑ってることが望みだから。





これくらいが丁度いい



(あらやだ、リップクリームとれちゃった。)(また名前さんが塗り直してくれるんでしょ…?)(ふふ、お望みとあらば。)


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さて。リクエスト消化に思いのほか手間取りました…

サムさんリクエストでヘタレ…の筈だったんですがね…orz

難しい!
ずっと書いて消してしながら、最終的に全く別の内容になりました\(^p^)/


ではでは、こんなのですみません。

読んでくれた方、リクくれたサムさん、ありがとうございました^^

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