記念用
□2年分の
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一年前に作ったチョコは、
沢山のチョコに埋もれて潰れてしまいそうで。
家に帰って自分で食べた。
レシピ通りに作ったのに全然おいしくなくて、
結局捨ててしまった。
鞄の中の包みがカサリと音を立てる。
鞄の中に一つだけ。
甘い香りをまとった包みが自分を主張するように音を鳴らす。
菖蒲「今年はうまく出来たけど…」
渡せるかな。
その一言が浮かびはぁ、とため息をつく。
また包みが音を立てた。
下駄箱の前に立って、自分の下駄箱から上履きを出す。
いつもの癖でちらりと、彼の下駄箱を見た。
『鳳長太郎』
ドキリ。
胸が高鳴る。
単なる文字の羅列なのに、
彼の名前だと思うとどうしようもなく愛おしい。
きゅうっと、胸の下が締め付けられた。
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