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□だって
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子供たちの手本となるべき教師として、というか、きちんと働いている社会人として、こんなことを言ってはいけないのだろうけれど。

私には一人だけ、とても嫌いな同僚がいる。



「才崎先生、お早うございます」

ああ、この声。私はそっと溜め息をついた。

朝、職員室の自席についた途端、隣の席から聞こえてくるこの声。
私の唯一嫌いな同僚の声だ。なんでこの人の隣なのかしら。そう思って、デスクの配当を決めた教頭先生を何度恨んだことだろう。
しかし、自立した社会人として、嫌いだからと言って無視をするわけにもいかない。
「おはようございます、ハデス先生」
…きちんと挨拶できたかしら。言ってからいつも不安になる。
この人の相手をするのは、何故かとても気を遣ってしまうのだ。

ちらりと顔を伺えば、隣の席のその人は、私のそんな不安に全く気がついていないようで、律儀に毎週発行している"保健室だより"なるものの製作を始めていた。

どうしてかイラッとしながら、私も今日の日程を確認する。
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