宝物&捧げもの
□いえないこころ
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「なに、そんなに俺に見せたくない物なの?あ、もしかして。煙草とか、エロ本とか?」
「ち、違います!」
真っ赤になって否定するもんだから、余計に気になって。
ポケットから手を出して、土方に向けて伸ばした。
「まぁまぁ、誰にも言わねーからよ。先生に見してみろって」
少しだけ、乱暴にたたかれることを恐れてそっと伸ばした手は、払われることなく掴まれてしまった。
え?
土方は俺の手、正確には白衣の裾を掴んだまま、じっと俺の顔を見つめた。
「見ないで下さい」
そんなことをされたら、はいと言ってしまいたくなる。
「は、はい」
案の定ついうなずいてしまうと、よし、と土方は笑って手を離した。
その笑顔が眩しくて、俺は夕陽に目を向ける。
しかし、夕陽もまた眩しくて、俺は仕方なく廊下に目をやった。
と。
「お、沖田君?」
ニヤニヤとたちの悪い笑いを浮かべて、悪魔の申し子とも言える沖田君が、扉の影に隠れてこちらをうかがっていた。
大人しくしていれば可愛らしい顔をしているというのに、その笑い方にはすでに可愛らしさのカケラもない。
「なにやってんですかぃ?先に帰っちまいますぜ、土方さん」
するっと俺を無視して、沖田は土方に声をかけた。
そしてそのまま、こちらをちらりとも振り返らず歩き去っていってしまった。
あれ?
絶対にからかわれると思ったんだがなぁ。
「ふざけんな、もとはと言えばお前のせいでっ」
土方は声を荒らげて、去っていった沖田に向って拳を振り上げた。
机に入れていた方の手で。
「あ」
つぶやいたのは、俺と土方、ほぼ同時。
ヒラリと舞ったのは、一枚の紙切れ。
なんだ、こんなもの。
拾おうと手を伸ばして、さすがに俺も固まった。
驚きで開いた唇から、煙草が落ちる。
「先生!!」
土方の口から悲鳴がこぼれ落ちて、急いでその紙切れを拾うと鞄にしまった。
土方の顔は夕陽以上に真っ赤になっているけれど、たぶん俺だって負けていない。
お互いに真っ赤な顔をして、口をパクパクしている。