ZAGARDIA TALE
□序章
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いつからだっただろう…
両親が私に‘誕生日おめでとう’の一言を言わなくなったのは。
いつからだっただろう…
それを寂しいと感じることすらしなくなったのは。
いつからだっただろう…
毎年盛大に開かれるパーティーを純粋に楽しめなくなったのは。
いつからだっただろう…
「…っ!」
突然ぐにゃりと歪んだ視界に耐えきれず、倒れ込んだ由莉の体を
誰かの力強い腕が支えた。
「大丈夫ですか?由莉さん。」
柔らかい声に顔を上げると、そこに居たのは自分が今日、会わなくてはならない残りの一人だった。
話を…しなくては…
頭はそう訴えるのに、安定しない視界と吐き気がそれを許さない。
それでも、と由莉はなんとか体を起こし、微笑んだ。
「はじめまして国枝社長。
本日は私の誕生日パーティーへようこそいらっしゃいました。
突然見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳なく思います。」
「…はじめまして。由莉さん。
大丈夫ですか?顔色が随分悪い…
少し休まれたらいかがでしょう?」
いいえ構いません。
そう言おうとしたが、あまりの不調に由莉は断念した。
「はい…そうさせていただきます。」
「ええ。ではお部屋までお送りいたしますよ。」
「では…お願いいたします。」
国枝とは親しくならなくてはいけないのだから好都合ね…
由莉は心の中でつぶやきながら、国枝の後に続いた。