第2章 -精霊編-
□2章5話 ボルト変電所
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「……」
波打ち際で佇んでいるとアリスの背後に誰かが近づいた。
「どうした。黄昏ちゃって」
「潤。……ん、家族と海にきたことないなって。ってか、一緒に外出した記憶ないや」
「アリスはどこ出身なの?」
「あたしはミストラル。一年中風が吹いて風車がある小さな村だよ」
「へー」
「けど、両親が森の中に小屋を建ててからそこでずっと暮らしてる。人とのコミュニケーションを避けて研究に没頭して……あたしね、ミストラルでの思い出はあんまりないんだ。幼いころに森の山小屋に移ったから」
「そっか」
「……」
「いつか機会があったらミストラルってとこに行ってみたいな」
「潤……」
「案内してくれる?」
「覚えてるかなι」
苦笑するが、だけど少し嬉しそうだった。
一方で和也は岩壁に寄りかかっている。
「ニノ」
「大野さん」
「眉間にシワ寄ってる」
「そう?ちょっとマシロについて考えてて」
「マシロ?」
各々自由に休息を楽しむ仲間達。和也の視線の先にはマシロの姿。雅紀、翔、サニアと楽しそうに談笑していた。
「あの子一体何者なんだろう」
「普通の人間ではないよな」
「ザーグはマシロのことをルーンって呼ぶし、我々よりもすごい力を持ってる。まるで神様みたいじゃない?」
視線に気づいたのか、和也に手を振るマシロ。なぜかそばにいる雅紀も一緒になって笑顔で手を振る。
「あいつが神だなんて……ニノの考えすぎじゃねーのか?」
「いつか自分から言ってくれるといいですがね。あの子の口から本当のことを」
「言ってくれるよ。マシロならそのまま正体を隠すなんてこたぁしないだろ。あいつ素直だし」
「そうですね」