第1章 -異世界編-

□1章19話 相克
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「マシロ……」

「目の色、青から赤に変わってる」

「あの男の子から感じる強い殺気……これでは対話も難しそうね」

潤とサニアの声を後ろに少年を黙ったまま雅紀は見つめる。

「おいら達マシロを救うためにここまで来たのに何でこんなことになるんだ」

智の言葉を聞いて少年は口の端を持ち上げて笑った。そしてふてぶてしく言った。

「あの幼子の精神体は消滅したよ。僕の中で完全にね。残念だったね」

スッと手にした杖の先を雅紀達に向ける。

「さぁ、始めよう。ザーグ様の計画を阻む者は皆、殺す」

「マジか」

あれから雅紀は口を全く開かない。潤は視線を投げた。

「相葉くん、立て。やるぞ」

「……うん……わかった……」

力のない返事。落とした剣を拾ってよろりと立つ。

「戦って……勝って……絶対に君を元に戻す」

「……っ」

「一緒に帰ろう。マシロ!!」

「ポイズンミスト!」

紫色の濃い霧が発生した。サニアの魔法だ。

「それで視界を奪ったつもり?」

チカッと目の端に輝くものが入る。

「……そこか」

「きゃっ!」

「サニア!!」

サニアが衝撃波で吹き飛ばされた。潤はすぐに駆けつけて助け起こす。

「大丈夫?」

「え、えぇ……ありがとう」

「いい“目印”になったよ、それ」

「目印?」

「……」

胸元に存在する銀のロケットペンダント。サニアはギュッと握り締める。

「サニアさん、それ……」

「……ロヴァルの写真が入ってるの。亡くなってもこうして忘れられないで……未練がましいったらないわね、私。つくづく情けないわ」

「そ、そんなこと――…」
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