第1章 -異世界編-
□1章13話 アリスの災難
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「雅紀、ニノ、潤」
「アリス。何?」
「これ人数分あるから使って」
「え、いいの?ありがとう」
自分専用の自動翻訳眼鏡。雅紀はすぐにかけると図書室内をぐるりと見回す。
「すごい数……けど、頑張って探さなきゃ!」
小走りに資料を取りに行く。
「世界紀行にこっちは偉人集か。うーん、どれがいいんだろう?」
悩むこと5秒。
「いいや。考えてもわかんないしひとまずこれとこれにしよう。あ、後これとこれとこれも」
かき集めた本を抱えて戻ろうとする。
「よっこいしょ。うっ……重ι」
ヒラ。
「! 何か落ちた」
一度本を置いて拾う。二つ折りに畳まれた紙をよく見もしないで雅紀は適当な本の間に挟むと棚に戻した。
「ふわぁ〜」
「すげーあくび」
「智、真面目に探しなさいよ」
「探してるよ。けど眠気が……」
「ったく。しょうがないな〜」
うつらうつらする智の分の本をアリスは手もとに引き寄せた。
もう何時間もここにいる。翔も疲労から目と目の間を指で揉みほぐす。
「少し眠ったら?これとこれはあたしが目を通しておくから」
「え?」
「何よ」
「いや……アリスって実は優しいんだね」
「へっ!?べ、別に優しくなんてない!こんなの普通だしー!?///」
「照れてる。可愛いとこあるじゃん」
「む〜ι」
「アリスのその気持ちだけもらっとくよ。みんなだって頑張ってるんだ。おいらももう少し粘らないと」
「わかった。けど無理はしないでよね」
智はふにゃりと笑った。