忍者のたまご

□あなたという人
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「厳しい先生」


だよね〜。
眼鏡の男の子は言う。
厳しい。
人を表す言葉としては。
決して、良い意味では捉えられないそれ。
だけど…


「声とか、どこいてもすぐ分かるもんな〜」


俺、ビクッてなるもん。
八重歯を覗かせ、もう一人の男の子が言う。
怒鳴ってばかりな先生なんだな。
なんて先生だろう。
だけど…


「本当に怖いんだよ〜」


僕、いつもゲンコツされちゃう。
ぷにぷにのお餅みたいな男の子が言う。
こんな、小さな子に暴力なんて!
体罰教師じゃないか。
だけど…


眼鏡越しの瞳がキラキラしていて。
厳しい先生だ、と言う口は緩やかに弧を描いて。

ビクッてなる。
と、非難を呟く口は口角が上がり。
表情は、どこか誇らしげで。

拳を降り下ろされた時を思い出してか。
痛かったなぁ、と言いつつ。
ふにゃり。
柔らかに、照れ臭そうに笑う。


言葉だけを聞けば、嫌いな先生。
しかし。
三人の顔も、声も。
ただ、一つの気持ちを。
隠す事なく、雄弁に語る。
語り掛けてくる。
それは…


「こらー!乱太郎!きり丸!しんべヱ!なーにやっとるかー!!」


間違いもなく、怒鳴り声。
それなのに。
優しい声。
安心する声。

あぁ、あなたは。

厳しくて。
怖くて。
拳骨までするような。
そんな人だけれど。


「わ!先生」
「すぐ戻ります!」
「ごめんなさい〜」


あなたの声が、一つですべて。




なに一つ、知らない私だけれど。
私はあなたの声が。
あなたという人が。
大好きです。
 

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