みじかいよみもの

□ただの独占欲
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「ぇ、つ、つけてって…」


「こーれ」


するり、と撫でられた胸元。
そこには赤い痕があった。
これ?これって…
数秒、桃は固まりそして理解した。


「ふぇっ、な、な、なんでっ?」


「やって〜、理由言い足りないんやもん。でも、桃は聞きたないんやろ?なら、桃もやってみたら親分の気持ち分かるって」


な?いい考えやろ!
満面の笑みで同意を求めてくるスペイン。
その笑顔に頷いてしまいそうになるのを必死に抑え、桃は首を横に振った。


「ぃ、いいですっ」


「なんで?」


「ふぇっ、だ、だって…やり方も分からない、し、は、」


恥ずかしいし…
と、言う前に桃の口は止まった。
それは、スペインが意地悪そうに瞳を光らせ妖しく笑んだから。
危ない。
桃の背後にぞくり、と悪寒が走った。


「やり方やったら…」


「ぁの、ス、ペイン、さんっ」


「まず、口を相手の肌に当てる」


「ひ、」


「ちょっと舐めて…」


「なめっ?…や、」


「んで、ちゅうっと」


ぴり、とした感覚が腕に。
そして、全身にまるで毒のように回った。
な?簡単やろ。
にかっ、とさもなんでもない様に笑うスペイン。
桃はそんなスペインに怒りが湧いてきた。
なぜ自分だけ、こんなに振り回されるのか。
未だに鳴り止まぬ鼓動。
熱くなった体。
恥ずかしくて死んでしまいそうだ。

少しは自分の気持ちを知って欲しい。

そんな思いから、体は動いた。


「お?」


桃はスペインに抱きつき、鎖骨辺りに唇を近付けた。
自分から抱きつくのも、ましてやこんな事をするのは初めてで。
普段なら、恥ずかしくて出来る筈のない行為。
しかし、今はただ。
スペインを動揺させたい一心で桃は動いていた。


「あれ?」


ただ、必死の思いでつけようとした赤い痕はつかなかった。
同じ様にしたのに…
そう思いながら桃はもう一度、唇を近付けようとした。
が、


「わ、っ!」


腕が引っ張られ、体がベッドに押し付けられた。
驚いて見開いた瞳には、真っ赤になったスペインが映る。
たまにしか見せない表情。
動揺、してる?
照れているのか、恥ずかしいのか。
とにかく、少しでも自分の行動に反応してくれた事が嬉しかった。
だが、そんな少しの優越感はスペインの言葉によって跡形もなく消え去る。


「あかん…」


「ぇ…?」


「桃が…いけないんや 」


責任、とってな?

そう言って、スペインは陽が昇るまで桃を責め続け。
赤い痕は更に多く刻まれた。



(理由?そんなん…)



《ただの独占欲》


おわり
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