ツイステ×ぐだ子

□異を
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《ひとそれぞれ》



しまった、と思った。
頭にはあったのに、思い出すのが遅すぎた。
飛行術というのは楽しいものであると思う。
というより、身体を動かすのは爽快である。
出来れば、生徒皆にオレのような筋肉を身に付けてもらいたいものだ…って、違う!
空を注視していた目を地上へ戻した。
今日は一年生2クラスだけでの飛行術訓練だ。
極論、飛行は魔力が有りさえすれば誰でも出来る。
その為、得意不得手は身体能力とセンスの差が如実に表れるのだ。
二年、三年生は慣れているが故の失敗はあるが、そう大きな事故は起こさない。
一年生は不慣れ故に、加減が出来ず命に係わる事故を起こす。
だから、と言ってしまえば言い訳だろうが…。
今年の一年生には、二人で一人前の生徒がいる。
魔力のないオンボロ寮の監督生とその寮生だ。
筆記はともかく。
魔力を必要とする実技は二人組なのだが…
まだ飛ぶ、いや。
浮くのがやっとな者の後ろに乗せるのはあまりにも危険で。
監督生には体力作りとして、校庭を走ってもらっていた。
上級生との合同であれば、せめて基本姿勢や留意点など授業らしいものが出来るのだが、と。
よし、今後二人の組は上級生合同授業にしよう。
そう計画を立てながら辺りに視線を走らせ…見つけたのは、


「こら!まだ駄目だと言っただろう!」


地上から、少し浮いた所。
嬉しそうに跳ねている狸の後ろで彼は箒に跨がっていた。
制止を振り切り…いや、それと上昇が同時になったのだ。
ふわふわふわ。
空に向かう二人は存外安定した様子で、あっという間に建物二階程の高さへ行ってしまった。
なんでも挑戦していく事は大切だ。
やりたいと思っているなら尚更で。
オレ達教師はそういう気持ちをそのまま出来るように手伝う仕事だと思っている。
しかし、今は危険の方が多すぎる。
降りてこい!
此方の必死さが伝わったのか、監督生は直ぐに応えた。
しゅんと大人しくなった己の寮生を一撫でして、浮いたままの箒からするり、と。
それはもう、特別な動作も声掛けもなく僅かな水溜まりを飛び越えるような気安さでもって降りた。
血の気が、引いた――――。



《ひとそれぞれ》
終わり
(デイヴィスぅ!!)
(喧しい、筋肉達磨)
(原石だ!あ、いや、訓練の賜物と言っていたし…目を見張るものはないが。しかし!それを差し引いても素晴らしい人材、素晴らしい証明だ!)
(鼓膜が破れる前に、せめて分かる言葉を話してくれ)
(いやぁ、それにしてもあれは素晴らしい身のこなしだった!是非とも今一度見たい!おい、聞いているか?)
(耳まで筋肉で詰まったか…)
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