04/08の日記

19:11
『モーリス』!

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こんばんは。。







 やっとやっと手に入れました〜!!!








ゲイ小説の古典的名著と言われる E.M.フォースターの『モーリス』↓











 片岡しのぶさんの翻訳で、1988年にフジテレビ出版から訳書が出ましたが、品切れになり、その後‥


 1994年に扶桑社エンターテイメントの1冊として再版されましたが、それも絶版となったまま、もはや増刷・再版のきざしはありません。。。




著者のフォースター自身は、20世紀イギリス文学の巨匠の一人だそうですが、日本語版のフォースター著作集には、なぜか、この重要な小説が収録されていないのです。

(著作集の中の短篇小説集には、ゲイを扱った小説が収録されているそうです。この日記を読まれた方からご指摘いただきました。ありがとうございます。)




『モーリス』に限りませんが、日本では、同性愛関係のまじめな著書も翻訳書も、著者・訳者はかならず女性です。。。 男性が、このような本を出すと、出版界から抹殺されてしまうのでしょうか?‥ 日本ならでは?のふしぎな現象です。。。






著者フォースターには、世界観の異なる人どうしの接触と葛藤をテーマにした小説が多いそうで、たとえば、『インドへの道』では、インドのインテリ青年と、英国の老若の人々との、たがいに好意を持ちながらも折り合えない葛藤、そのゆえの悲劇的事件の進行を描いています。ギトンは、映画で見ました。


『モーリス』も映画になっていますが↓、ギトンはまだ見ていません。







『モーリス』の場合も、著者の追求するテーマは、同性愛そのものよりも、イギリスの上流社会の家族たちと、いわば“情夫”として、その家の中に入り込んだ非上流の主人公との世界観の奇妙な異種並存の状況にあるようです。




この小説は、著者の同性愛経験に基いているのですが、当時、英国では同性愛は法律で禁じられていました。

そして、明確に犯罪として処罰されるようになったのが、著者がモデルである主人公モーリスが、恋人の上流家庭で同棲中の時だったので、


主人公は、禍が及ぶことを恐れた恋人によって放逐されてしまう。。。



 ‥というストーリーらしいです。なにしろ、これから読むんですから(笑)











じっさいに、“コンピューターの父”チューリングをはじめ、多くの同性愛者が、この法律のために投獄され、また社会から葬り去られる憂き目に遭っています。



フォースターも、生前は、この小説を発表することはできず、世の中に知られたのは著者の死後だったそうです。





ぱらぱらとめくって、サワリらしいところを引用してみましょうか:



「こうして彼らのラブ・シーンは、はかりしれぬ意味を持つ言語を得て新たな方向へ発展していった。いかなる伝統も彼らを威圧しなかった。いかなるしきたりも、なにが詩的でなにが不合理であるかを決定しなかった。彼らは、かつてイギリスの精神が容認せず、したがって枷をかけえなかった一つの情熱にかかわっていた。ついに彼らの精神は、えも言われぬ美しいもの、忘れえぬもの、永遠なるものに到達したが、それを言いあらわす言葉はつたなく、彼らが感じているものもごく単純な感情であるにすぎなかった。

 『クライブ、キスをしてくれるかい?』

 軒先で雀が囀りはじめ、遠くの森で数珠かけ鳩が啼きはじめたとき、モーリスが言った。」






↑上の訳文中の「枷をかけえなかった一つの情熱にかかわっていた」の部分ですが、




原文は:

 They were concerned with a passion that few English mind has admitted, and so created untrammelled.


となっていますから、



「彼らがかかわっていたのは、かつてイギリスのいかなる精神も容認せず、したがって、枷をはめずに創造することもなかった(同性間の性愛という)一つの情熱なのであった。」


と訳したほうがよいと思います。









ばいみ〜 ミ





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カテゴリ: ユーラシア

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