ゆらぐ蜉蝣文字
□第7章 オホーツク挽歌
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駒ヶ岳と噴火湾
【74】 噴火湾(ノクターン)
7.12.1
【第7章】最後の詩篇は、ふたたび《初版本》に戻ります。
「噴火湾(ノクターン)」(⇒:春と修羅・初版本)は、1923年8月11日付ですが、場所は:
. 春と修羅・初版本
40噴火灣のこの黎明の水明り
41室蘭通ひの汽船には
42二つの赤い灯がともり
〔…〕
45駒ケ岳駒ケ岳
46暗い金屬の雲をかぶつて立つてゐる
とあるように、駒ヶ岳の手前(北側)の噴火湾(内浦湾)岸であり、伊達〜森駅の間と思われます。
「噴火湾」は、道南の渡島半島と室蘭の間にある大きな湾で、内浦湾とも言います:画像ファイル:噴火湾
「室蘭通ひの汽船」は、森港と室蘭を結んで、噴火湾を航行していた連絡船で(当時は、長万部〜東室蘭間には、まだ線路がありませんでした)、岸辺を走る列車から、連絡船の灯りを見ていることになります。
時刻は、↓つぎのように明け方で、作者は、二等客車の座席(寝台?)で眠っています:
. 春と修羅・初版本
03 (車室は軋みわたくしはつかれて睡つてゐる)
. 春と修羅・初版本
33 (二等室のガラスは霜のもやう)
34もう明けがたに遠くない
35崖の木や草も明らかに見え
宮沢賢治のサハリン旅行は、急行料金を節約するために、普通列車(おそらく三等)を乗り継いで来たのですが、この11日早朝に乗っている客車は↑「二等室」で、列車ダイヤから推定すると、急行なのです:7.1.6 旅程の推定
理由は分かりませんが──旅の疲労が溜ったのか、旅費の余裕ができたのか──小樽〜函館間は、ラク旅を選んだようです。
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