ゆらぐ蜉蝣文字
□第7章 オホーツク挽歌
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7.7.7
ちなみに、シラカバは、寒い場所でないと幹が白くならないのだそうです。サハリンに生えている樺が、シラカンバなのか、近種の樺なのか☆は分かりませんが、寒冷な気候のために、本州で見かけるシラカバよりも白いのかもしれません。
☆(注) ウィキで見た限りですが、シラカバには、エゾノシラカンバ、カラフトシラカンバなどの変種があります。
14-15行目で:
14Van[']t Hoff の雲の白髪の崇高さ
15崖にならぶものは聖白樺(セントペチユラアルバ)
と言っていましたが、寒地であるサハリン、しかも荒れ果てた原野の白樺の幹の白さが、賢治には、強く印象に残ったのかもしれません。
ともかく、このように考えてみると、28行目の:
「にせものの大乘居士どもをみんな灼け」
は、なにか、偽善的な人々を非難しているような感じがします。
しかし、↑この28行目は、いきなり激烈な表現が出てくるので、驚かされます。
これまでは、個々の語句の意味を解くことに専念してきましたが、ここで急に激しい感情が突出する理由をたずねるには、もっと“詩の意味の流れ”を重視した読み方をする必要がありそうです。
そこで、もう一度最初に戻って、意味の流れを追ってみたいと思います。
. 春と修羅・初版本
01やなぎらんやあかつめくさの群落
02松脂岩薄片のけむりがただよひ
03鈴谷山脈は光霧か雲かわからない
04 (灼かれた馴鹿の黒い頭骨は
05 線路のよこの赤砂利に
06 ごく敬虔に置かれてゐる)
07 そつと見てごらんなさい
08 やなぎが青くしげつてふるえてゐます
09 きつとポラリスやなぎですよ
10おお満艦飾のこのえぞにふの花
11月光いろのかんざしは
12すなほなコロボツクルのです
13 (ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
14Van[']t Hoff の雲の白髪の崇高さ
15崖にならぶものは聖白樺(セントペチユラアルバ)
(O, Your reverence! Sacred St. Betula Alba!)[訳](おお、尊師!神聖なる聖ベチュラ・アルバよ!)
16青びかり野はらをよぎる細流
17それはツンドラを截り
18 (光るのは電しんばしらの碍子)
19夕陽にすかし出されると
20その豪烽フ草の葉に
21ごく精巧ないちいちの葉脈
22 (樺の微動のうつくしさ)
23黒い木柵も設けられて
24やなぎらんの光の点綴
25 (こゝいらの樺の木は
26 焼けた野原から生えたので
27 みんな大乘風の考をもつてゐる)
28にせものの大乘居士どもをみんな灼け
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