ゆらぐ蜉蝣文字


第7章 オホーツク挽歌
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7.3.4


歌詞の一番には:

 When your day's work is over
 Then you are in clover,

という部分がありますが、
これは“be in clover”が慣用句で、

「一日の仕事が終れば/満ち足りて豊かに過ごす」

という意味なのだそうです。しかし、

「一日の仕事が終れば/きみはクローバーの草原で憩う」

と読みたくなります。そう読んだら間違えなのでしょうか?!‥

そこで、ギトンがググってみましたところ‥

. .Knadle Family Postcards
↑こちらのサイトに出ている、アメリカ・ウィスコンシン州で1909年に使用された絵葉書には、"IN THE GOOD OLD SUMMER TIME" と書いてあって、明らかにこのワルツを意識しているのですが、着飾った淑女達(!?)が牧場で干草運びの労働をしている図柄です!:画像ファイル:"IN THE GOOD OLD SUMMER TIME"

この流行歌は、当時アメリカの人々にも、牧場での仕事の後の憩いを思わせたのではないでしょうか?

そういうわけで、宮沢賢治も、この歌を、クローバーの花咲く絨毯のような広々としたアメリカの牧場を想像して歌っていたのは、間違えないと思うのです。(^_^)d

ところで、駒ケ岳北麓の噴火湾沿岸:森、落部などでは、古くから牧場が開かれていました:⇒画像ファイル:駒ヶ岳

そうした牧場風景が、車窓から眺められたはずです。この‘挿入歌’は、そういう意味で、ここに入れられているのだと思います。



. 駒ヶ岳
「《ごらんなさい。
  その赭いやつの裾野は
  うつくしい木立になって傾斜(スロープ)もやさしく
  黄いろな林道も通ってゐます。》
 『全体その海の色はどうしたんでせう。
 青くもないしあんまり変な色なやうです。』
 『えゝ、それは雲の関係です。』
 何が雲の関係だ。気圧がこんなに高いのに。」

北麓は、噴火の影響が少なかったと思われるので、当時から裾野にカラマツなどの森林植生があったのではないでしょうか。

2人の乗客の会話のようですが、じっさいの会話のスケッチと見てもよいし、賢治の創作を考えてもよいと思います。

頻繁な噴火で、岩と火山礫ばかりの荒れた山肌を現していた南側・西側の風景に変って、北麓では、木立ちのある裾野や、麓に広がる牧場風景が心を和ませます。
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