ゆらぐ蜉蝣文字


第5章 東岩手火山
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5.5.7


. 春と修羅・初版本

18 色鉛筆がほしいつて
19 ステツドラアのみぢかいペンか
20 ステツドラアのならいいんだが
21 來月にしてもらひたいな
22 まああの山と上の雲との模様を見ろ
23 よく熟してゐてうまいから

やはり、何度読んでも、この部分は対話に見えます。
しかし、問題は、会話の区切り方です:

「色鉛筆がほしいつて、ステツドラアのみぢかいペンか?」

「ステツドラアのならいいんだが…」

「來月にしてもらひたいな。まああの山と上の雲との模様を見ろ。よく熟してゐてうまいから」

↑21-23行をひとつにまとめたのは、「山と上の雲との模様」には、あまり色彩がないように思われるからです。

遠くの山の上の「雲環」が、背景のきらきら光る空から浮き出している風景に使うのは、白、黒、藍、青くらいではないでしょうか‥
その程度なら、ふつうの鉛筆と墨汁とブルーブラック・インクで十分でしょう。

学校の同僚との会話でしょうか?「來月にしてもらひたいな。」は、予算の関係かもしれません。

あるいは‥妄想が過ぎるかもしれませんが‥作者と、さきほどのリス──森の精との会話として読むことはできないでしょうか?‥「色鉛筆がほしいつて‥」が作者、「ステツドラアのならいいんだが」がリス。
そう考えれば、この詩全体が、よくまとまります。

そして、その場合には、

「來月にしてもらひたいな。」

は、“今(10月15日)はまだ、森を彩色するには早いよ。来月になったら、色とりどりの紅葉に塗ってほしい”と、森の精に向って答えていることになります。
また、

「ステツドラアのならいいんだが…」

は、ステッドラーのような洋風の垢抜けた色彩が現出する期待──森の精はステッドラーで塗るつもり──です。

早池峰連山と雲の、薄墨に青を加えた微妙な色彩が:

「よく熟してゐてうまい」

というのも、リスに向かって言うのならば納得しやすくないでしょうか?w

↑ギトンの読み方、いかがでしょうね?。。。


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