ゆらぐ蜉蝣文字


第3章 小岩井農場
94ページ/184ページ


3.6.17


ネットには、

「大股で歩くと着物の裾が、はばけるしょっ!」〔下着の裾がスカートからはみ出して、みっともないでしょ〕

という例が出ていました:北海道弁ミニ講座

また、北海道では、本義の「喉に詰まらせる」のほうも、“口からはみだすほど頬張る”と説明している方がおられました。
その例として:

「そんなにあわてて食べんでも。口からハバケてるしょ」〔口からはみ出しているでしょ〕 ⇒:北海道弁辞典


秋田方言・他のブログでも、「はばける(喉に詰まらせる)」は、

「ある場所がいっぱいの状態になってつかえることが原義」

「原義は、何かの容量をオーバーすること」

──と説明している方がいらっしゃいました:複眼鏡 コメント:すいか泥棒

そうすると、現在、北日本の“共通語”としては、喉に詰まる、つかえる、という意味でもっぱら使われていますが、

もともと、この語はもっと広く「はみ出す」という意味で使われていたのではないか?
──ということが想像できるわけです。

そして、本来の広い原義は、標準語の「はみ出す」「はみ出る」に取って代わられて、使われなくなり、

「はみ出す」という標準語では表現しきれない“口からはみ出す”ケースだけが、「はばける」の意味として残った──ということではないでしょうか。‥

‘文化の中心から遠い周縁部ほど、古い言葉や言い回しが温存される’──ことは、言語の歴史の法則性と言っていいでしょう。
本州で、「はばける」の語義が狭くなってしまった後も、北海道では、原義が生きて使われているのではないでしょうか?

そういうわけで、賢治の時代にはまだ、

「はばける」=はみ出す

という広い意味でも使われていたかもしれません。。。

だとすれば、

「野原のほかでは私はいつもはゞけてゐる」

とは、

野原☆以外=町では、人々のあいだでは、私はいつも、はみ出している⇒はみ出し者だ──

という意味に理解できるのではないか!

これはギトンの新説かもしれませんが、一考に価するんではありませんかね?w

☆(注) 「のはら」という語も、宮沢賢治は、草原、原っぱだけでなく、田畑、原野なども含めて、広く“田園”“平野”というような意味で使っています。木の生えている山地(つまり、「森」)に対して、「のはら」なのだと思います。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ