ゆらぐ蜉蝣文字


第3章 小岩井農場
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3.7.25


カスパルとマックスは、猟師で、親友どうしです。

カスパルは悪魔と取引して、7発の“魔弾”を手に入れます。しかも、マックスが来る前に、悪魔とカスパルの間だけで秘密に謀議して、7発のうち6発は、射手の狙ったところに当たる、最後の一発は、悪魔がマックスの許嫁に当てる──と取り決めます。

こうして、悪魔は、最後の一発で、“無垢な乙女”の魂を地獄に引き摺り込むというしかけ‥

カスパルは、マックスに対して、きみのために魔弾を手に入れて、きみが許嫁(いいなづけ)と結婚できるようにしてやる、と恩着せがましく言います。

心からカスパルに感謝するマックス。

ニヤッと嘲笑うカスパル。マックスの許嫁、じつはカスパルの元カノだったのです。。。
“俺の女を取られてたまるか!”‥‥カスパルは、マックスへの復讐に燃えているのです‥

許嫁の信頼を裏切り、不正な手段で結婚をもくろむ“正直者”‥

恋人を裏切る許嫁‥

親友を裏切る親友‥

そして、最後の土壇場で取引相手を裏切る悪魔‥

7発目の“魔弾”は、カスパルの胸に命中するのです‥!

すべてが裏切りで出来上がった重奏曲‥裏切りの四重奏。。。

130自由射手(フライシユツツ)は銀のそら

さきほどから、けわしく輝いては、激しい動きを見せていた大空は、「自由射手(フライシユツツ)」──どこに弾を撃ってくるか分からない悪魔の狩人を産み落としたのでした。

この行は、【下書稿】では:

「射手は銀空 黒外套」

でした。ウェーバーの『魔弾の射手』が導入されたのは、散逸した【清書稿】以後なのです。

賢治は、「黒外套」などという生やさしいものでは足りず、《狼ノ森》⇒《狼谷》から思いついた『魔弾の射手』で、最後の仕上げをしたのだと思います。

最後の仕上げ──“7発目の魔弾”を仕込んだのです。

そうです‥

「パート7」こそは、“7発目の魔弾”☆なのです。。。

☆(注) だから作者は、「パート5」「パート6」になる部分を削った後も、「パート7」という章の番号をそのままにしたのです。

このパートには、毒針が隠されています………

しかし、今回の“解読”は、このへんで止めておきましょう。

最後まで読み解いてしまったら、皆さんが推理する楽しみを奪うことになってしまいますから......

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