ゆらぐ蜉蝣文字
□第2章 真空溶媒
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2.2.2
. 春と修羅・初版本
〔A説〕「アンネリダ・タンツエーリン」は、ミミズだ。あるいは、イトミミズだ。
〔B説〕「アンネリダ・タンツエーリン」は、ボウフラだ。
研究者の間では、“ボウフラ説”が通説になっているとか‥
これは、宮澤家の家族‥‥妹のシゲ子さんなどが、賢治がボウフラの詩を書いていたという回想を残しているためらしいのです。
しかし、賢治が家族に、虫の種類を正確に報告していたとは限らないと思います。
「なに、これ。ボウフラ?…気持ちわりい」
「うるさい。あっち行ってろ」
って感じじゃないでしょうかw
ところで、ギトンは、検討してみた結果、〔A説〕も〔B説〕も間違えだという結論に達しましたww
それを、↓これからお話したいと思います。
詩の内容を見ますと:
. 春と修羅・初版本
07 (えヽ、8 γ e 6 α
08 ことにもアラベスクの飾り文字)
というパッセージが何度も繰り返されています。
「8 γ e 6 α」
という・いろいろな文字の形に、虫が身をくねらせているということです。
8・e・6 は、パソコンや携帯のフォントでは見にくいですが、《初版本》では、筆記体のフォントが使用されています。つまり、ミミズがくねっている形を模しているのです。
このように、身体をくねらせて、いろいろな文字の形になるという点は、イトミミズのような細長い体を思わせます。
また、
04赤いちいさな蠕蟲が
19赤い蠕蟲(アンネリダ)舞手(タンツエーリン)は
21燐光珊瑚の環節に
などとあって、身体は赤くて関節があります。この点でもやはり、イトミミズか、ミミズの類でしょう。
ところが、他方では:
20とがつた二つの耳をもち
とも書いてあります。
つまり、頭部に、対になった突起があるのです。ということは、ミミズではありません(ミミズの画像を見てもよいという方は[←警告しましたから責任は負いませんw]、こちら⇒ 画像ファイル・イトミミズ
どうやら「とがった二つの耳」は、あまり下等な動物には無いようなのです。
ミミズだけでなく、ヒルも、ゴカイも…、環形動物全体が除外されてしまいます。
蚊の幼虫ボウフラは、どうでしょうか?
ミミズもボウフラも見てよい方は(笑)、↑上のファイルで確認していただきたいのですが、
ボウフラは、まず、赤くはありません。非常に細い毛のような触角はありますが「とがった二つの耳」には見えないでしょう。そして、身体は意外に太く短くて、「8、γ、‥α」といった形になるのはちょっと無理そうなのです。
作品に即する限り、ボウフラに「蠕虫舞手」の適格性はなさそうなのです。。