ゆらぐ蜉蝣文字


第2章 真空溶媒
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2.1.10


【パリスの審判】
画像ファイル【パリスの審判】
1 神々の宴会に招待されなかった不和の女神エリスは、怒って、「最も美しい女神に与える」と書いた黄金のリンゴを宴席に投げ込んだ。たちまち、結婚の女神ヘラ、知恵の女神アテナ、愛と美の女神アフロディテ(ビーナス)の3人が喧嘩を始めたので、ゼウス神は仲裁するために、羊飼いのパリスに黄金のリンゴを渡して判定役を命じた。

2 パリスは、じつはトロイアの王子なのだが、生まれてすぐにイデ山に捨てられ、羊飼いに拾われて育てられていた。パリスを生む時、母である王妃のヘカベは、自分の産んだ木が火種になってトロイアが焼け落ちる夢を見たので、夢占い師の勧めに従って、生まれた子を殺すことにした。しかし、殺害を命じられた家来は殺すにしのびず、赤子をイデ山に捨てたのだった。

3 3人の女神はパリスの前に並んで美を競い合ったが、勝負がつかないと、さまざまな約束をしてパリスを買収しようとした。
アテナは「戦いにおける勝利」を約束し、ヘラは「アジア(トロイア、エジプト、バビロニア、…)の君主の座」を与えると申し出た。しかし、パリスは、「最も美しい女を与える」と言ったアフロディテに黄金のリンゴを与えて勝利者とした。パリスは、すでにオイノネというニンフ(妖精)を妻としていたにもかかわらず…

4 しかも、アフロディテの言う「最も美しい女」とは、スパルタ王の妻となっていたヘレネのことだった。
パリスは、オイノネを捨てて、アフロディテに導かれてスパルタへ行き、ヘレネを略奪してトロイアの王宮に入った。
そのため、ギリシャとトロイアの間で戦争になった。
「パリスの審判」に敗れたアテナとヘラは、パリスを怨んでギリシャ勢に付き、他の神々も、それぞれ、ギリシャ方、トロイア方のどちらかを応援して、たがいに争ったので、天地を分ける大戦争となった。
パリスも戦死し、最後は、トロイアの滅亡によって、ヘカベの夢の予言が成就することとなった。¶





これが《パリスの審判》の神話です。

パリスがゼウスから《黄金のリンゴ》を受け取った時点では、アテナ(戦争、勝利)、ヘラ(王座、支配)、アフロディテ(美、性愛)のうち、どれをパリスが選ぶかは決まっていなかったのですから、
《黄金のリンゴ》は、そのどれかの象徴というわけではなさそうです。

むしろ、これらに対する欲望(名誉欲、権力欲、性欲)の象徴と言ってよいのではないでしょうか?
そして、欲望の満足が得られれば、没落・破滅の運命を避けることはできません。

そうすると、「ゾンネンタール」が《黄金のリンゴ》を食べて破滅したのは、金銭欲だけが原因ではないことになるかもしれません。

しかし、「金皮のまヽたべた」のですから、やはり金銭欲(ギリシャの英雄とは無縁??)が主体でしょう‥

けっきょく、《パリスの審判》は、「真空溶媒」の《金のリンゴ》とは、あまり関係がなさそうです。。。

ただ、↑↑神話を調べたおかげで解ったこともあります。

この Wiki によると、ギリシャ神話の《黄金のリンゴ》は、マルメロだという説があるそうです。

たしかに、マルメロは、リンゴに似た形で、色も黄色ないし黄金色、…《金のリンゴ》と言ってもおかしくないです。賢治の詩にも何度か出てきます:画像ファイル・マルメロ

“ゾンネンタールのリンゴ”は、マルメロを考えていたかもしれないですね。

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