『心象スケッチ 春と修羅』
□グランド電柱
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そのとき展望車の藍いろの紳士は
X型のかけがねのついた帯革をしめ
すきとほつてまつすぐにたち
病氣のやうな顔をして
ひかりの山を見てゐたのだ
高級の霧
こいつはもう
あんまり明るい高級ハイグレードの霧です
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白樺も芽をふき
からすむぎも
農舎の屋根も
馬もなにもかも
光りすぎてまぶしくて
《よくおわかりのことでせうが
日射ひざしのなかの青と金
落葉松ラリツクスは
たしかとどまつに似て居ります)
まぶし過ぎて
空氣さへすこし痛いくらゐです