『心象スケッチ 春と修羅』
□グランド電柱
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風景観察官
あの林は
あんまり縁青ろくせうを盛もり過ぎたのだ
それでも自然ならしかたないが
また多少プウルキインの現象にもよるやうだが
も少しそらから橙黄線たうわうせんを送つてもらふやうにしたら
どうだらう
ああ何といふいい精神だ
株式取引所や議事堂でばかり
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フロツクコートは着られるものでない
むしろこんな黄水晶シトリンの夕方に
まつ青さおな稲の槍の間で
ホルスタインの群ぐんを指導するとき
よく適合し効果もある
何といふいい精神だらう
たとへそれが羊羹いろでぼろぼろで
あるひはすこし暑くもあらうが
あんなまじめな直立や
風景のなかの敬虔な人間を
わたくしはいままで見たことがない