『心象スケッチ 春と修羅』

□グランド電柱
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霧とマツチ


(まちはづれのひのきと青いポプラ)
霧のなかからにはかにあかく燃えたのは
しゆつと擦られたマツチだけれども
ずゐぶん擴大されてゐる
スヰヂツシ安全マツチだけれども
よほど酸素が多いのだ
(明方の霧のなかの電燈は
まめいろで匂もいヽし
小學校長をたかぶつて散歩することは


────────


まことにつつましく見える)


芝 生


風とひのきのひるすぎに
小田中はのびあがり
あらんかぎり手をのばし
灰いろのゴムのまり、光の標本を
受けかねてぽろつとおとす


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