『心象スケッチ 春と修羅』

□小岩井農場
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そらでやる Brownian movement
おまけにあいつの翅
はねときたら
甲蟲のやうに四まいある
飴いろのやつと硬い漆ぬりの方と
たしかに二重
ふたへにもつてゐる
よほど上手に鳴いてゐる
そらのひかりを呑みこんでゐる
光波のために溺れてゐる
もちろんずつと遠くでは
もつとたくさんないてゐる
そいつのはうははいけいだ
向ふからはこつちのやつがひどく勇敢に見える


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うしろから五月のいまごろ
黒いながいオーヴアを着た
醫者らしいものがやつてくる
たびたびこつちをみてゐるやうだ
それは一本みちを行くときに
ごくありふれたことなのだ
冬にもやつぱりこんなあんばいに
くろいイムバネスがやつてきて
本部へはこれでいいんてすかと
遠くからことばの浮標
ブイをなげつけた
でこぼこのゆきみちを
辛うじて咀嚼
そしやくするといふ風にあるきながら


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