『心象スケッチ 春と修羅』
□小岩井農場
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つめたくそしてあかる過ぎた
今日は七つ森はいちめんの枯草
松木がおかしな緑褐に
丘のうしろとふもとに生えて
大へん陰欝にふるびて見える
パート二
たむぼりんも遠くのそらで鳴つてるし
雨はけふはだいじやうぶふらない
しかし馬車もはやいと云つたところで
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そんなにすてきなわけではない
いままでたつてやつとあすこまで
ここからあすこまでのこのまつすぐな
火山灰のみちの分だけ行つたのだ
あすこはちやうどまがり目で
すがれの草穂ぼもゆれてゐる
(山は青い雲でいつぱい 光つてゐるし
かけて行く馬車はくろくてりつぱだ)
ひばり ひばり
銀の微塵みぢんのちらばるそらへ
たつたいまのぼつたひばりなのだ
くろくてすばやくきんいろだ