『心象スケッチ 春と修羅』

□小岩井農場
7ページ/28ページ


つめたくそしてあかる過ぎた
今日は七つ森はいちめんの枯草
松木がおかしな緑褐に
丘のうしろとふもとに生えて
大へん陰欝にふるびて見える


パート二

たむぼりんも遠くのそらで鳴つてるし
雨はけふはだいじやうぶふらない
しかし馬車もはやいと云つたところで


────────


そんなにすてきなわけではない
いままでたつてやつとあすこまで
ここからあすこまでのこのまつすぐな
火山灰のみちの分だけ行つたのだ
あすこはちやうどまがり目で
すがれの草穂
もゆれてゐる
 (山は青い雲でいつぱい 光つてゐるし
  かけて行く馬車はくろくてりつぱだ)
ひばり ひばり
銀の微塵
みぢんのちらばるそらへ
たつたいまのぼつたひばりなのだ
くろくてすばやくきんいろだ


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ