『心象スケッチ 春と修羅』

□小岩井農場
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 (あん 曇るづどよぐ出はら)
から松の芽の緑玉髄
クリソプレース
かけて行く雲のこつちの射手
しやしゆ
またもつたいらしく銃を構へる
 (三時の次あ何時だべす)
 (五時だべが ゆぐ知らない)
過燐酸石灰のヅツク袋
水溶十九と書いてある
學校のは十五%だ
雨はふるしわたくしの黄いろな仕事着もぬれる
遠くのそらではそのぼとしぎどもが
大きく口をあいてビール瓶のやうに鳴り


────────


灰いろの咽喉の粘膜に風をあて
めざましく雨を飛んでゐる
少しばかり青いつめくさの交つた
かれくさと雨の雫との上に
菩提樹
まだ皮の厚いけらをかぶつて
さつきの娘たちがねむつてゐる
爺さんはもう向ふへ行き
射手は肩を怒らして銃を構へる
  (ぼとしぎのつめたい發動機は……)
ぼとしぎはぶうぶう鳴り
いつたいなにを射たうといふのだ
爺さんの行つた方から


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