『心象スケッチ 春と修羅』
□小岩井農場
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やつぱりあの蒼鉛さうえんの労働なのか
(こやし入れだのすか
堆肥たいひど過燐酸くわりんさんどすか)
(あんさうす)
(ずゐぶん氣持のいヽ處どごだもな)
(ふう)
この人はわたくしとはなすのを
なにか大へんはばかつゐる
それはふたつのくるまのよこ
はたけのおはりの天未線スカイライン
ぐらぐらの空のこつち側を
すこし猫背でせいの高い
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くろい外套の男が
雨雲に銃を構へて立つてゐる
あの男がどこか氣がへんで
急に鐵砲をこつちへ向けるのか
あるひは Miss Robin たちのことか
それとも兩方いつしなのか
どつちも心配しないでくれ
わたしはどつちもこわくない
やつてるやつてるそらで鳥が
(あの鳥何て云ふす 此處らで)
(ぶどしぎ)
(ぶどしぎて云ふのか