『心象スケッチ 春と修羅』

□小岩井農場
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 どの建物かにまがつて行つた
冬にはこヽの凍つた池で
こどもらがひどくわらつた
 (から松はとびいろのすてきな脚です
  向ふにひかるのは雲でせうか粉雪でせうか
  それとも野はらの雪に日が照つてゐるのでせうか
  氷滑りをやりながらなにがそんなにおかしいのです
  おまへさんたちの頬つぺたはまつ赤ですよ)
葱いろの春の水に
楊の花芽
ベムペロももうぼやける……
はたけは茶いろに堀りおこされ
廐肥も四角につみあげてある


────────

並樹ざくらの天狗巣には
いぢらしい小さな緑の旗を出すのもあり
遠くの縮れた雲にかかるのでは
みづみづした鶯いろの弱いのもある……
あんまりひばりが啼きすぎる
  (育馬部と本部とのあひだでさへ
   ひばりやなんか一ダースできかない)
そのキルギス式の逞ましい耕地の線が
ぐらぐらの雲にうかぶこちら
みぢかい素朴な電話ばしらが
右にまがり左へ傾きひどく乱れて
まがりかどには一本の青木


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