『心象スケッチ 春と修羅』

□東岩手火山
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樺の向ふで日はけむる
つめたい露でレールはすべる
靴革の料理のためにレールはすべる
朝のレールを栗鼠は横切る
横切るとしてたちどまる
尾は der Herbst
 日はまつしろにけむりだし
栗鼠は走りだす
  水そばの苹果緑
アツプグルリンと石竹ピンク
たれか三角やまの草を刈つた
ずゐぶんうまくきれいに刈つた
緑いろのサラアブレツド


────────


  日は白金をくすぼらし
  一れつ黒い杉の槍
その早池峰
はやちねと薬師岳との雲環うんくわん
古い壁畫のきららから
再生してきて浮きだしたのだ
  色鉛筆がほしいつて
  ステツドラアのみぢかいペンか
  ステツドラアのならいいんだが
  來月にしてもらひたいな
  まああの山と上の雲との模様を見ろ
  よく熟してゐてうまいから



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