『心象スケッチ 春と修羅』
□オホーツク挽歌
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風に削り残された黒い梢だ
(ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
結晶片岩山地では
燃えあがる雲の銅粉
(向ふが燃えればもえるほど
ここらの樺ややなぎは暗くなる)
こんなすてきな瑪瑙の天蓋キヤノピー
その下ではぼろぼろの火雲が燃えて
一きれはもう錬金の過程を了へ
いまにも結婚しさうにみえる
(濁つてしづまる天の青らむ一かけら)
いちめんいちめん海蒼のチモシイ
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めぐるものは神經質の色丹松ラーチ
またえぞにふと桃花心木マホガニーの柵
こんなに青い白樺の間に
鉋をかけた立派なうちをたてたので
これはおれのうちだぞと
その顔の赤い愉快な百姓が
井上と少しびつこに大きく壁に書いたのだ
鈴谷平原