『心象スケッチ 春と修羅』
□オホーツク挽歌
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ひとつの十字架をたてることは
よくたれでもがやる技術なので
とし子がそれをならべたとき
わたくしはつめたくわらつた
(貝がひときれ砂にうづもれ
白いそのふちばかり出てゐる)
やうやく乾いたばかりのこまかな砂が
この十字架の刻みのなかをながれ
いまはもうどんどん流れてゐる
海がこんなに青いのに
わたくしがまだとし子のことを考へてゐると
なぜおまへはそんなにひとりばかりの妹を
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悼んでゐるかと遠いひとびとの表情が言ひ
またわたくしのなかでいふ
(Casual observer! Superficial traveler!)
空があんまり光ればかへつてがらんと暗くみえ
いまするどい羽をした三羽の鳥が飛んでくる
あんなにかなしく啼きだした
なにかしらせをもつてきたのか
わたくしの片つ方のあたまは痛く
遠くなつた榮濱の屋根はひらめき
鳥はただ一羽硝子笛を吹いて
玉髄の雲に漂つていく
町やはとばのきららかさ