『心象スケッチ 春と修羅』
□オホーツク挽歌
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おれのいもうとの死顔が
まつ青だらうが黒からうが
きさまにどう斯う云はれるか
あいつはどこへ堕ちやうと
もう無上道に屬してゐる
力にみちてそこを進むものは
どの空間にでも勇んでとひこんで行くのだ
ぢきもう東の鋼もひかる
ほんたうにけふの…きのふのひるまなら
おれたちはあの重い赤いポムプを…
《もひとつきかせてあげやう
ね じつさいね
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あのときの眼は白かつたよ
すぐ瞑りかねてゐたよ》
まだいつてゐるのか
もうぢきよるはあけるのに
すべてあるがごとくにあり
かヾやくごとくにかがやくもの
おまへの武器やあらゆるものは
おまへにくらくおそろしく
まことはたのしくあかるいのだ
《みんなむかしからのきやうだいなのだがら
けつしてひとりをいのつてはいけない》
ああ わたくしはけつしてさうしませんでした