『心象スケッチ 春と修羅』

□風景とオルゴール
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ほんたうにそんな偏つて尖つた心の動きかたのくせ
なぜこんなにすきとほつてきれいな気層のなかから
燃えて暗いなやましいものをつかまへるか
信仰でしか得られないものを
なぜ人間の中でしつかり捕へやうとするか
風はどうどう空で鳴つてるし
東京の避難者たちは半分腦膜炎になつて
いまでもまいにち遁げて来るのに
どうしておまへはそんな醫される筈のないかなしみを
わざとあかるいそらからとるか
いまはもうさうしてゐるときでない
けれども惡いとかいヽとか云ふのではない


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あんまりおまへがひどからうとおもふので
みかねてわたしはいつてゐるのだ
さあなみだをふいてきちんとたて
もうそんな宗教風の戀をしてはいけない
そこはちやうど両方の空間が二重になつてゐるとこで
おれたちのやうな初心のものに
居られる塲處では決してない



風景とオルゴール



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