『心象スケッチ 春と修羅』
□風景とオルゴール
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粗剛なオリザサチバといふ植物の人工群落が
タアナアさへもほしがりさうな
上等のさらどの色になつてゐることは
慈雲尊者じうんそんじやにしたがへば
不貧慾戒ふとんよくかいのすがたです
(ちらけろちらけろ 四十雀しじふから
そのときの高等遊民は
いましつかりした執政官だ)
ことことと寂しさを噴く暗い山に
防火線のひらめく灰いろなども
慈雲尊者にしたがへば
不貧慾戒のすがたです
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雲とはんのき
雲は羊毛とちぢれ
黒緑赤楊はんのモザイック
またなかぞらには氷片の雲がうかび
すすきはきらつと光つて過ぎる
《北ぞらのちぢれ羊から
おれの崇敬は照り返され
天の海と窓の日おほひ