『心象スケッチ 春と修羅』
□風景とオルゴール
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川はどんどん氷ザエを流してゐるのに
みんなは生なまゴムの長靴をはき
狐や犬の毛皮を着て
陶器の露店をひやかしたり
ぶらさがつた章魚たこを品さだめしたりする
あのにぎやかな土澤の冬の市日いちびです
(はんの木とまばゆい雲のアルコホル
あすこにやどりぎの黄金のゴールが
さめざめとしてひかつてもいい)
あヽ Josef Pasternack の 指揮する
この冬の銀河輕便鐵道は
幾重のあえかな氷をくぐり
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(でんしんばしらの赤い碍子と松の森)
にせものの金のメタルをぶらさげて
茶いろの瞳をりんと張り
つめたく青らむ天椀の下
うららかな雪の臺地を急ぐもの
(窓のガラスの氷の羊齒は
だんだん白い湯氣にかはる)
パッセン大街道のひのきから
しづくは燃えていちめんに降り
はねあがる青い枝や
紅玉やトパーズまたいろいろのスペクトルや
もうまるで市塲のやうな盛んな取引です