『心象スケッチ 春と修羅』

□風景とオルゴール
23ページ/24ページ


雪を趣えてきたつめたい風はみねから吹き
野はらの白樺の葉は紅
べにや金キンやせはしくゆすれ
北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる
  (あれがぼくのしやつだ
   青いリンネルの農民シヤツだ)


イーハトブの氷霧


けさはじつにはじめての凛々しい氷霧
ひやうむだつたから
みんなはまるめろやなにかまで出して歡迎した


────────


冬と銀河ステーシヨン


そらにはちりのやうに小鳥がとび
かげらふや青いギリシヤ文字は
せはしく野はらの雪に燃えます
パッセン大街道のひのきからは
凍つたしづくが燦々
さんさんと降り
銀河ステーシヨンの遠方シグナルも
けさはまつ赤に澱んでゐます


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ