『心象スケッチ 春と修羅』

□風景とオルゴール
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そのたよりない性
せい質が
こんなきれいな露になつたり
いぢけたちいさなまゆみの木を
べにからやさしい月光いろまで
豪奢な織物に染めたりする
そんならもうアカシヤの木もほりとられたし
いまはまんぞくしてたうぐわをおき
わたくしは待つてゐたこひびとにあふやうに
應揚
おうやうにわらつてその木のしたへゆくのだけれども
それはひとつの情炎
じやうえん
もう水いろの過去になつてゐる


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一本木野

松がいきなり明るくなつて
のはらがぱつとひらければ
かぎりなくかぎりなくかれくさは日に燃え
電信ばしらはやさしく白い碍子をつらね
ベーリング市までつづくとおもはれる
すみわたる海蒼
かいさうの天と
きよめられるひとのねがひ
からまつはふたたびわかやいで萠え


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