『心象スケッチ 春と修羅』

□風景とオルゴール
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とんぼは萓の花のやうに飛んでゐる
   (萓の穗は滿潮
    萓の穗は滿潮)
一本さびしく赤く燃える栗の木から
七つ森の第四伯林青
べるりんせいスロープは
やまなしの匂の雲に起伏し
すこし日射しのくらむひまに
そらのバリカンがそれを刈る
    (腐植土のみちと天の石墨)
夜風太郎の配下と子孫とは
大きな帽子を風にうねらせ
落葉松のせわしい足なみを


────────


しきりに馬を急がせるうちに
早くも第六梯形の暗いリパライトは
ハツクニーのやうに刈られてしまひ
ななめに琥珀の陽
も射して
  《たうたうぼくは一つ勘定をまちがへた
   第四か第五かをうまくそらからごまかされた》
どうして決して、そんなことはない
いまきらめきだすその眞鍮の畑の一片から
明暗交錯のむかふにひそむものは
まさしく第七梯形の
雲に浮んだその最後のものだ
緑青を吐く松のむさくるしさと


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